 「さて、さて腹がへったよ。確か俺は弁当を持って来た筈だ。 風呂敷に包んで、首に巻いて・・・あった、ありましたよ。 ここん処で弁当食べてもいいですか」 「どうぞ、どうぞ」
「あれッ、なんだい。包みを開けたら、風呂敷にヒモが付いてて 変だと思ったら嬶の腰巻。で、弁当の代わりに枕がある。 あん畜生、間違えたんだ。亭主に恥をかかせやがったばかりか、 飯の食わせねえで日干しにするつもりかね。俺の日干しを どっかに売ろうってんだよ。帰ったらタダぁ置かねえ」 |
 「お嬶ぁ、今、帰った。何だって枕を腰巻に包みやがった」 「私しゃ包まないよ。そこに置いてあったのをお前さんが勝手に持って行っちゃたんだよ まさか広げたんじゃないだろうね」 「ちゃんと広げたい」 「そんなこと威張るんじゃないよ。忘れていった弁当食べちまいなよ。 慌てないで、よく落ち着いて・・・。食べたら外は埃っぽかったろうし、 金坊連れて湯屋行っといでよ」 「分かったよ。金坊、お父っつぁんと湯に行こう」
「嫌だいー!お父っつぁんと湯にくと、逆さに入れるんだもん」 「たまにしか入れねえじゃねえか」 「たまにだって嫌だィ」 |